
抗体医薬・TCR研究のためのハイスループットスクリーニング
※本資料は公開文献をもとに作成した研究用途向け参考資料です。
アプリケーションノートの要旨
抗体医薬やT細胞療法の発展に伴い、高い結合能や機能活性を有する抗体およびT細胞受容体(TCR)の探索は重要な研究テーマとなっています。一方で、従来のマイクロプレートを用いたスクリーニングでは、多数の候補を評価するために多大な作業負荷と試薬量を必要とし、探索可能なライブラリー規模にも制約があります。
ドロップレットマイクロ流体技術では、単一のB細胞、抗体産生細胞、ハイブリドーマまたはT細胞を独立した微小反応空間へ封入し、抗体結合能やT細胞機能を個別かつ並列的に評価することが可能です。本アプローチは、試薬消費量の低減と高スループット化を両立できる可能性があり、抗体探索、TCR探索、免疫細胞解析および次世代免疫療法研究における有効な研究手法として利用されています。
1. 抗体・TCRスクリーニングとは
抗体・TCRスクリーニングとは、多数のB細胞、ハイブリドーマ、抗体ライブラリー、T細胞またはTCRライブラリーの中から、目的抗原に対する結合能や機能活性を有する候補を探索・選別する研究手法です。
主な評価項目として以下が挙げられます。
- 抗原結合能
- 親和性
- 特異性
- 中和活性
- サイトカイン産生
- T細胞活性化能
- 細胞傷害活性
- 発現量
- 安定性
近年では抗体医薬、CAR-T細胞療法、TCR-T細胞療法および免疫学研究において、大規模ライブラリーから有望な候補を効率的に探索するため、ハイスループットスクリーニング技術の利用が進んでいます。
2. ドロップレット抗体・TCRスクリーニングの原理
ドロップレットマイクロ流体技術では、水相と油相を利用して均一な微小液滴を生成します。
各ドロップレットは独立した反応容器として機能し、
- B細胞
- ハイブリドーマ
- 抗体産生細胞
- T細胞
- 標的細胞
- 抗原
- 蛍光プローブ
などを個別に封入することができます。
抗原結合、細胞活性化、サイトカイン分泌または細胞傷害反応によって生じる蛍光シグナルなどを評価することで、目的の機能を有する候補を識別します。
3. DMSCSとセルソーターによるスクリーニング手順
① ライブラリー調製
抗体ライブラリー、ハイブリドーマ、B細胞集団、T細胞集団またはTCRライブラリーを準備します。
② ドロップレット生成
DMSCSを用いて細胞や試薬をドロップレット内へ封入します。
各ドロップレットは独立した反応空間として機能し、シングルセルレベルでの評価を行うことができます。
③ 反応・培養
ドロップレット内で抗原結合反応や免疫応答を進行させます。
蛍光シグナルやレポーターアッセイを利用することで、候補の機能評価が可能です。
④ セルソーターによる選別
反応シグナルを指標としてドロップレットを選別します。
高活性候補を含むドロップレットのみを回収することで、大規模ライブラリーから有望候補を効率的に探索できます。
⑤ 候補解析
回収した候補について、
- 抗体配列解析
- TCRシーケンス解析
- 結合評価
- 機能評価
- 再培養評価
などを実施し、有望候補を同定します。
4. ドロップレット抗体・TCRスクリーニングの特長
ハイスループット解析
多数のドロップレットを高速生成し、並列的な評価を行うことで、大規模ライブラリーの探索研究に活用できます。
シングルセルレベルでの機能評価
細胞ごとに反応を分離できるため、集団平均では見えにくい特性や活性差を評価できる可能性があります。
遺伝子情報と機能情報の対応付け
シングルセル由来の抗体やTCRについて、配列情報と機能情報を関連付けながら解析することが可能です。
高感度な機能評価
結合評価だけでなく、細胞活性化、サイトカイン産生、細胞傷害活性などの機能を指標とした評価系の構築が可能です。
5. 応用例
抗体医薬探索
- モノクローナル抗体探索
- 中和抗体探索
- 機能性抗体探索
- アゴニスト抗体探索
- 免疫チェックポイント抗体探索
二重特異性抗体研究
Bispecific AntibodyやT細胞エンゲージャー抗体の探索および評価。
TCR探索研究
抗原特異的TCRの探索および機能評価。
免疫細胞研究
T細胞、B細胞および免疫関連細胞の機能解析。
細胞治療研究
CAR-T、TCR-Tおよび次世代細胞治療候補の探索研究。
6. DMSCSを用いた抗体・TCRスクリーニング研究
DMSCSはドロップレットマイクロ流体技術を利用したシングルセル封入向けドロップレット生成装置です。
抗体・TCRスクリーニング研究において、
- シングルセル封入
- 均一なドロップレット生成
- 抗原・細胞共封入系の構築
- 蛍光アッセイ系を含む評価系の構築
- セルソーターとの連携
を支援し、ドロップレットベースのハイスループット解析環境の構築に活用できます。
DMSCS製品情報
7. 結論と展望
高機能抗体や有望なTCR候補の探索では、多数の候補の中から希少な高活性クローンを効率的に見出すことが重要な課題となっています。ドロップレットマイクロ流体技術は、単一細胞を独立した微小反応空間内で評価できるため、大規模ライブラリーを対象としたハイスループットスクリーニングとシングルセルレベルでの機能評価を両立できる研究アプローチとして利用されています。
DMSCSによるドロップレット生成とセルソーターによる選別を組み合わせることで、抗原結合能、機能活性および免疫応答を指標とした候補選抜に応用できる可能性があり、抗体医薬研究、TCR研究、免疫学研究および次世代細胞治療研究などへの活用が期待されています。
参考文献
- Shembekar N, Hu H, Eustace D, Merten CA. Single-Cell Droplet Microfluidic Screening for Antibodies Specifically Binding to Target Cells. Cell Reports. 2018;22(8):2206-2215.
- Wang Y, Jin R, Shen B, et al. High-throughput functional screening for next-generation cancer immunotherapy using droplet-based microfluidics. Sci Adv. 2021;7(4):eabe3839.
- Das D, McGrath JS, Moore JH, Gardner J, Blom D. Recent Advances in Antibody Discovery Using Ultrahigh-Throughput Droplet Microfluidics: Challenges and Future Perspectives. Biosensors. 2025;15(7):409.
- Miyaoka Y, Han X, et al. Isolation of functional T-cell receptors by single-cell screening technologies. Trends Biotechnol. 2023;41(8):1030-1044.
- Hollfelder F, Dressler OJ, Merten CA. Droplet-based microfluidics for high-throughput antibody and immune-cell screening. Nat Rev Methods Primers. 2024.
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